類似性と相補性
心理士・こころ
あなたが、恋人や結婚相手を選ぶ時、『この人は恋人にするには面白くていいけれど、結婚相手にするにはちょっと物足りない』
という具合に、ハードルを設けて選択すると思います。
心理学の分野では、人が、友人、恋人、あるいは人生のパートナーを選ぶ際には、
段階に応じたいくつかのフィルターにかけて選択するという理論があります。
その際に、『類似性(Similarity)』と『相補性(Complementary)』という言葉が使用されますので、ご説明しましょう。
フィルター理論
A. C. Kerckhoff and K. E. Davis のフィルター理論(1962)
では、
階級や宗教などの社会的位置づけや内面性においては『類似性(Similarity)』を重視し、性格的特長に関しては『相補性(Complementary)』を重視するとしています。
即ち、まだあまり親しくない友人を選択する際には、出身地や趣味など、自分と類似性のある相手を求めますが、
人生のパートナーを選ぶ際には、自分の足りない部分を補ってくれる『相補性』を重視するという理論です。
刺激-評価-役割モデル
B. I. Murstein のStimulus-Value-Role(刺激-評価-役割)モデル(1970) では、
以下の通り、各段階において、優先するものが異なってくることを示しました。
刺激段階 ・・・
男性の場合、豊満な美しさ、髪の美しい女性などのように、肉体的特長に惹かれます。
また、年齢、容貌、民族の『類似性』にも惹かれます。
評価段階 ・・・
関係を続ける価値があるかどうか、自分の価値と比較して相手を評価します。
特に、宗教に対する態度、性、職歴、家族、性別に注目します。
役割段階 ・・・
仕事関係の構築活動を分担しますので、役割への態度には『類似性』を求めますが、役割自体には『相補性』を優先します。
類似性・相補性の恋愛への応用
出会った直後の刺激段階では、容姿、肉体的特長などの外見以外に、類似性が重要になります。
趣味や色の好みが似ていたり、また同郷だったりすると、それをネタに話を弾ませることができます。
また、類似性があると、相手への親近感・信頼感も増します。
例えば、『**県出身の奴に悪い奴はいない』など、がそれです。
ですので、初対面で親しくなろうと思えば、どんな些細なことでも良いので、相手との類似性を探すことです。
出会った直後には、相補性はほとんど必要ありませんので、ひたすら類似性に注目して下さい。
そして、付き合いが深まるにしたがって、共同で何かを行うことも増えてきますので、相補性が必要になってきます。
『僕はこれをするので、君はあれをやって』と役割分担するのです。
特に、結婚するとなると、外見や類似性だけでは長続きせず、相補性が重要になってきます。
それぞれの足りない部分を補い合ってこそ、一つの共同作業をスムーズに進めて行くことが出来るわけなのです。
相補性を考えないで、類似性だけで結婚すると悲惨な結果を招くこともありますので、
人生のパートナーを選ぶ際には、しっかり選定しましょう。